今月の1シーン
2015年8月の写真の説明
2015年08月01日
8月のホームページフラッシュ
餓鬼(がき)の姿
先月から引き続き、お盆についてです。
お盆の季節には、先月に紹介しました目連尊者と餓鬼道に堕ちた母の物語に由来する「盂蘭盆会」や、「施餓鬼会(せがきえ)」が行われます。「施餓鬼会」とは、餓鬼道に堕ちて苦しむ餓鬼に、食べ物を施して供養する仏事のことです。
これらの「盂蘭盆会」や「施餓鬼会」の両方とも餓鬼をテーマにしていますが、一体この餓鬼とは何者でしょうか。
食べ物を食べようとしたとたん、火に変わってしまう餓鬼が有名ですが、実は餓鬼の姿は多種多様で、小さい者から大きい者、そして名前のある者も存在します。
今月の1シーンは、「物を貪り、他人を嫉妬した者」の変わり果てた餓鬼の姿を見ていきます。
フラッシュ動画について
1枚目
钁身(かくしん)
写真は、钁身(かくしん)と呼ばれる餓鬼で、身体の大きさは人間の二倍もあります。熱い火で身体を焼き続け、苦しみのため四つん這いになっています。手や足はカマキリのように細く、顔はありますが、火を吹く口があるだけで、目も鼻もありません。
どのような原因で、このような餓鬼になるのでしょうか。生前、財物に執着して生き物を殺した者が、このような報いを受けます。
2枚目
食気(じきけ)
食気は、病気になった人を治るように祈る時、その匂いをかいで生きる糧としています。
生前、自分だけ美味しいものを食べて、妻や子に与えなかった者の変わり果てた姿です。
3枚目
食法(じきほう)
食法という餓鬼は、危険な場所で食べ物を探しまわります。色は真黒で、雨のように涙を流します。お寺の近くに行って、法話を聞き、やっと命をたもっているのです。
生前、名誉や利益を貪って、よこしまな気持で教えを説いた者が、このような報いを受けます。
4枚目
食水(じきすい)
食水は、飢えと渇きで苦しみ一生懸命に水を探しますが、どうしても得ることができません。
また、長い髪の毛が顔をおおい、見ることができません。川の近くに走って行って、川を渡る人の足からしたたる水を飲むことによって、どうにか生命をつないでいます。
もしこの餓鬼が、自分で水を取って飲もうとすると、水の守り神たちが、杖で叩くのです。
生前、水を加えた酒を売ったり、みみずや蛾を酒の中に入れた者が、このような報いを受けます。
これらの餓鬼の寿命は、人間の時間に換算すれば15,000年で、常に飢渇状態におかれて苦しまなければなりません。姿は見えないものの、多くの餓鬼が人間世界にまぎれて生息しているともいわれています。
つい餓鬼という言葉を「あいつは餓鬼のようだ」と他人を非難する時に使いますが、そうではなく、常に飢えて、いつまでたっても満たされない自分自身の心が、餓鬼をつくりだしているのではないでしょうか。
今年は、お盆を機縁にお寺やお墓に参って、知らないうちに育てていた餓鬼の心を見つめ直してはどうでしょうか。
今月の写真説明
絵・小早川好古
文責・青森直樹
「お盆」その言葉が『日本書紀』の中に初めて出てきたのは、西暦657年です。
そこには「須弥山石」を造り盂蘭盆会をしたと記されています。
この作品では「須弥山石」を飛鳥路に訪ね、また『仏説盂蘭盆経』の目連尊者と餓鬼道に堕ちた母親の物語を収録しました。
今回紹介しました餓鬼の凄まじさを京都国立博物館や聖衆来迎寺にある絵巻物から見ながら、「お盆」の由来とその意味を詳しく紹介しています。
ブルーレイ
「お盆 ルーツをたずねて」
(収録時間27分) 7,200円(税抜)
目連尊者と母親の物語を中心に、お盆の行事の意味についてのお話です。
CD「お盆 目連さま」
お話 間野大雄 2,000円(税抜)
地獄のDVD作品「往生要集 地獄 〜穢土厭離の世界〜」。二巻一組で詳細に描いています。
地獄の絵画は、源信僧都の説く『往生要集』を基に忠実に再現しています。獄卒たちのユーモアあふれるオリジナルの絵画は、見ていて楽しめます。
絵画を担当した小早川好古画伯は、現実に存在しない地獄の生き物や鬼などの表現に苦労したといいますが、それでも鬼の爪一つにしても丁寧に描かれています。
夏の暑い日が続く中、普段地獄の絵を見る機会のない子供たちと一緒に地獄の凄まじさを味わい、地獄の恐ろしさと、何をしたらこの地獄に堕ちるのか話あってもいいでしょうし、大人も十分考えさせられます。ぜひご覧ください。
DVD「往生要集 地獄 〜穢土厭離の世界〜 上巻」
(収録時間27分) 9,000円(税抜)
DVD「往生要集 地獄 〜穢土厭離の世界〜 下巻」
(収録時間22分) 9,000円(税抜)
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